「周りが見えなくなるくらい必死になって夢を追いかけていた、あの頃の自分には戻れない。だって、怖くてしかたがないんだもん」
「何が怖いんだよ」
「ステージの上で、声が出なくなっちゃうこと……」
お客さんの視線が刺さって、体が震えて。
本番中なのに、司会をしなきゃいけないのに、言葉が喉に引っかかって、何もしゃべれなくなるのが怖いんだ。
「3年も前のことだろ? 今のお前は、もう大丈夫かもしれねーだろ?」
「大丈夫じゃない。私がまた司会なんてしたら、あの時と同じになっちゃう」
ステージから逃げ出して、アミュレットのみんなにもまた大迷惑をかけちゃう
「ちょっと来い!」
え?
ギュッと手首を掴まれたけど。
来いってどこに?
私の腕を引っ張りながら、前だけを見て歩く珀ちゃん。
石の階段を上って、ドーム型の滑り台のてっぺんに連れてこられた。
そして珀ちゃんは手首を離すと、私の背中を強めに叩いた。