翌週の土曜日、美咲は 麻有子を訪ねた。

出産した麻有子に、落ち着いたから 遊びに来てと誘われていた。
 


美咲が聡とのことを話すと、
 
「美咲、モテ期だね。」

と冷やかす麻有子。
 
「ちょっと。真剣に悩んでいるんだから。」

と美咲が口を尖らせると 麻有子のご主人の智くんは、声を出して笑った。
 


麻有子が産んだ 絵里加ちゃんは、お人形のような可愛らしさで。

大人しく 智くんに抱かれている。


智くんと麻有子の間にある、温かで優しい空気に 美咲は驚く。

美咲は、自分と聡に この空気はないと思った。
 

智くんのお父様は 有名企業の経営者で、麻有子達が 今住んでいる豪華なマンションも、お父様のものだった。

智くんは次男で、商社勤務のサラリーマンだけれど。

お父様の援助が無ければ、この暮らしはできないと 麻有子は言っていた。
 

確かに 恵まれた結婚だけれど。

経済的に 苦労する心配はないけれど。


でも智くんと麻有子は、更に深い愛情で結ばれていた。


二人から滲む優しい信頼。


運命の人と麻有子は言ったけれど。