就職してすぐの研修で、美咲は麻有子と仲良くなった。

軽井沢出身の麻有子も、美咲と同じような中学時代を過ごしていた。
 

「軽井沢なんていいなあ。」

高級リゾート地としての 軽井沢しか知らない美咲の言葉に、

「そう思うでしょう。でも、住民の生活は 全然違うの。貧しくて、悲しくなるくらい質素で。」

と麻有子は寂しそうに言う。
 


とても美人なのに、まるでそれを隠すように 控えめな麻有子。


多分、麻有子も 成績が良いことで 目立っていたのだろう。

だから、それ以上目立たないように 地味に生きてきたのだと 美咲は思った。
 


「そうなの?意外だね。軽井沢って リッチなイメージだもの。」

美咲が驚いて言うと
 
「そうよね。だから辛いの。豊かな人が見えるのに 手が届かないの。」

美咲は 麻有子の心に 共通する思いを感じた。


麻有子は 同期入社の中で一番 心を許せる友達になっていた。