みんな知らない、知るはずがない、この時間。

学校の最寄駅から、5駅。

ここから先は、私と彼以外の通学者はいない。

友達と別れて、ドアが閉まるとどちらからともなく、駆け寄る。

フレンドリーで、優しくて、カッコよくて、面白くて、そんなモテモテな彼。

私と接点があるだなんて、みんなきっと思ってもいないだろう。

「なあ、岡本さん」
「ねえ、田中くん」

それは、もう慣れた一連の動作で、互いが互いに、話そうと思っている。

入学したばかりの時に、同じクラスだった田中くんが、声をかけてくれたのが、始まりだった。

男の子と話すなんて、中学の時は、あんまりなかったし、声をかけられた時は、びっくりしたけど、田中くんの話上手さで、すぐに打ち解けた。

やっぱり、田中くんの人気者たる所以は、そこにあるんだろうなって思う。

いつもは、テスト勉強の話とか、部活であった話とか、そういう話をするんだけど、今日は、違った。