「それじゃ、二戦目の提案といこうか」

「早くなさい」

 冷静に告げながらも心はちっとも穏やかではない。たとえどんなおかしな勝負を持ちかけられても毅然と対応してみせよう。

「実は明後日、我が家でパーティーを催すことになっている。白薔薇祭りの開催で各地から貴族が集まっているんでね。メレディアナ、お前も招待させてほしい。ただしもてなされる側ではなく、もてなす側としてだ」

 前言撤回。

「わたくしに何をさせたいの?」

「簡単なこと、パーティーで余興を披露してもらおう。俺とお前、どちらが多くの称賛を得られるか、勝負だ」

「つまり芸を披露しろと? 相変わらずおかしなことを言いだすのね」

「どんな勝負なら出しぬけるか悩み抜いた結果だ」

 そしてまんまと出し抜かれてしまったわけで……悔しさに歯を食いしばる。彼はわかっているのだろうか、そう言われてはプライドが刺激されることを。今度こそ相手の土俵できっちり負かしてくれる。

「勝敗は招待客の反応に委ねるというわけね」

「目の肥えた奴らが多い。半端な余興じゃ満足しないぜ。どうだ?」

 この説明だけでは不明点が残る。いくつか確認してから判断すべきだろう。

「……出席者の名簿はいただけるかしら? 貴方が知る範囲で構わないけれど、情報開示を要求するわ。主催者ばかりが客層を把握しているのはフェアじゃないもの」

 顧客の好みを把握するのは重要なことである。商売対決をするわけではないが商売同様、客層を把握しておくのは必要なことだろう。

「手配しよう。ラーシェル、すぐに頼む」

 命令が下るなり主に礼をして控えていたラーシェルは姿を消していた。
 取り残されたメレはさらに詳しい詳細を求めた。

「余興にルールは?」

「観客を楽しませられるのなら、なんなりと。せいぜい得意な芸でも披露することだな」

 オルフェにはよほど得意な芸があるのか自信に満ち溢れていた。しかしメレとて負けてはいない。

「その挑戦受けてあげる。魔女なんて引き籠っていそうな相手に遅れはとらないと思った? 特技は魔法薬調合とでも考えたのかしらね、わたくし得意だけれど! とにかく後悔すればいいわ。完膚なきまでに叩きのめして敗北の味を教えてさしあげる」

 言い切ったメレは厨房の扉に手をかけた。

「おい、今日は門から帰るのか?」

 てっきり鏡から帰ると思っていたオルフェが引き止める。