それから数日、透は玲奈と口を聞くことができなかった。ただ黙々と仕事をこなす。

「透くん」

そんな日々が続いたある日、透は美咲に声をかけられた。

「美咲さん、何かあった?」

「いや、玲奈のことで……」

透の隣に美咲は腰掛ける。その目はとても真剣なものだった。

「あのね、玲奈があんな風に犯人をあなたに探させたり、自分で調査しないのは大きな理由があるからなの」

「大きな理由?」

「それはいつか話すよ。でも、玲奈はアニサキスで苦しんでいる人たちを見て何とも思っていなかったわけじゃないから。そこはわかってほしい」

「……うん」

美咲がいい人だというのは、透はよく知っている。しかし、胸の中にはまだ玲奈に対する不信感は残っていた。

「美咲、村田刑事から捜査の進展があったと連絡があった」

ドアが開き、玲奈が入って来る。透は素早く目をそらした。あの日以来、玲奈の目をきちんと見れていない。