早朝。
隣の部屋から響くドアの開閉音。
静かに階段を降りてく奈那の気遣い。
時刻は6時。
休みの日なら爆睡してる時間帯だけど俺の目は冴えていた。
部屋に戻ったのを確認して俺も準備にかかる。
案の定「えっ!」とびっくりされた。
少し鼻歌交じりに玄関までやって来た奈那を靴履いた状態で先にスタンバイしてる俺。
「おはよう……どうしたの?え、ヒロもどっか行くの?」
キャップ帽被って寝癖隠しただけの俺と違って図書館行くのにもお洒落に余念がないな。
やっぱ起きてきて良かった。
こんなんじゃ帰りに絶対ナンパされるの確定。
「ん、一緒に行く」
「えっ!?本当に!?」
「ボディーガード的な?この前のことだってあるし1人にしたくないんだけど?」
そう、あの駅前でのことね。
大学生にナンパされてた。
「え〜、無理して起きてくれたの?いいのに…」
「俺が勝手についてくだけだから気にしないで」
「ていうかデートしてきなよ…」
「約束してない」
「私とも約束してないよね?すっごい眠そうな顔してますけど?」
ジッと見つめ合う。
ドアの前に立って通せんぼとかガキか。
「一緒に行ったらダメ…?」
こう言えばまた困らせてしまうのかな。
どちらにせよ1人では行かせたくない。
フ〜と溜め息をつかれて終わった…と思い恐る恐る見たら優しく笑ってる。
腕を組んで「ダメじゃないよ」って見上げる瞳。
2人で外に出て歩いてく。
「本当に勉強するだけだよ〜?一緒に来ても面白くないのに〜」とクスクス笑われる。
「そうだとしても姉貴が1人で行くんなら俺も行くから」
「……シスコン」
「ごめん、それだけは何を言われようと譲る気ないから」