ケータイ小説 野いちご

闇色のシンデレラ

『帝王』

日付は4月8日。世間は主に入学式や入社式など、新しい門出を迎えるシーズン。


荒瀬さんに拾われておよそ1ヶ月が過ぎた。



このごろはご飯を食べられるようになったし、短期間で8kgも激減していた体重も、少しずつ戻っている。


外傷はほとんど目立たなくなった。


夜はうなされたりするけど、荒瀬さんが抱きしめて一緒に眠ってくれるから、前ほど悪夢を見ない。


だけど外に出ることは、まだ怖くてできない。


正直、このままヤクザに世話を焼いてもらうのもどうかと迷うときもある。



それでも逃げようと思わないのは───




「壱華、帰ったぞ」




安心できる空間を知り、このぬくもりを覚えてしまったから。


毎日、必ず抱きしめてくれる荒瀬さん。


無償でこんな小娘の世話をしてくれる彼。


いつの間にか恐怖は薄らぎ、人形と化していたはずのわたしの心はだんだんと氷解していく。

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