ケータイ小説 野いちご

闇色のシンデレラ

「なぜ動かない。どうして荒瀬がかくまうような素振りを見せる。
あいつらにメリットはないじゃないか。
必要ないならさっさと取引に応じればいいものの」

「落ち着いてください父さん。
仮に僕たちが動いてしまえば万事休すです。焦ってはいけません」

「落ち着いてなどいられるか。これは刻一刻を争う事態だ。
成功すれば西雲会が、西日本の暴力団情勢が崩壊する。
柱のひとつを崩してしまえば荒瀬組もいずれ解体することができるというのに」

「承知しています。ですが……」




まだ役者のそろわない舞台。


難しい話をする中年オヤジと、わたしと相思相愛だなんて騙されてる、金づるのマリオネット——おっと、お偉い警視監とその息子。


2人は会議室の円卓に肩を並べて座ってずっとこんな感じ。


あーあ、つまらない。




「それより、山城(やまぎ)の到着はいつだ。あの男がいなければ話が進まない」

「もうしばらくお待ちください。何せ向こうは宮城からのおいでなので」

「ふん……ごろつき無勢がなめ腐りおって」






面白みのない話に、同席する実莉もそろそろ我慢の限界ね。




「ねえねぇ、お姉ちゃん」



ほら、小声で囁いてわたしの顔をのぞきこんできた。



「何?」

「実莉が迎えに行っていい?」

「迎えにって、あの人を?」

「うん、どうせみんなそろったら邪魔者扱いされて追い出されちゃうんでしょう?
待ってるのつまらないからぁ、実莉が迎えに行ってあげるの」

「そう。どうぞ、いってらっしゃい」



どうせダメって言っても聞かないだろうけど、実莉は足取り軽く会議室を出ていった。


行き先は実莉が最近狙い始めたあの男。


いくら若頭で権力があるといえ、あんな危険な男に頬を染める妹の気がしれない。


けど、まあいいわ。わたしには関係のない話。


今は目先の欲望を叶えることが先なの。



だから壱華。


また苦しめてあげるから待ってなさいよ。


無表情なその顔が、恐怖に歪んでいくことを楽しみにしてるから。

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