6話「泥水と風と」



 冷たい。苦しい。怖い。


 空澄は冷たい沼の水の中でもがいていた。
 必死に腕をバタつかせて顔を上げる。


 「ハァッッ………ゴホゴホッ………だ、誰か………」


 必死に沼から這い上がろうと岸辺の草や枝を掴む。けれど、どこも滑りがあり上手く掴めないのだ。足場も悪く何とか地面に足を伸ばそうとしても水草なのか藻などに足が絡まり上手く動かせないでいた。
 もがき苦しみながらも必死に手を伸ばすが届かない。そうしていく内に、体が重くなっていく。洋服が水を吸っているのもあるが、冷水で体が冷え、動いたことにより疲労が貯まってきたのだろう。このままでは、自分の体が沈んでしまう。その瞬間、更に空澄に恐怖が襲った。


 (どうしよう………このままじゃ、本当に死んじゃう……苦しい…………)


 静かな公園内にバシャバシャと水音だけが響く。けれど、まだ薄暗い明朝。公園内、しかも昨日白骨が見つかった場所など誰もくるはずもない。そんな事は空澄もわかっていた。だが、空澄は誰かが助けてくれるのを待つしかなかった。