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黒色の家具で統一されたその部屋に敷かれた濃い赤紫色の絨毯は、圧倒的な存在感を放つ。


ドアから一番離れた窓際。


その真ん中には光沢の美しい上質な一人机が、未処理の書類を上に乗せていた。


「………さて、問題はここからだな」


椅子に腰を下ろし、深く息を吐く。


それを前で見ていたルークスは、顔を険しくさせた。


「王様……ご無礼承知の上で申し上げますが、わたくしはあの者を受け入れる事は出来ません」


嫌悪感丸わかりの態度に、再びため息をつく。


「お前のスレンスト帝国嫌いは、相変わらずの様だな」

「どうして許す事が出来ましょう……。例え過去に起きた歴史の出来事だとしても、あの様な卑劣な事をした連中を………っ!」


その瞳は憎しみに満ちていた。


遥か昔に起きたあの出来事は、もちろん忘れていない。


いや、忘れられたらどんなに良かった事か。


あの日の出来事を思い出すだけで酷く胸が痛み、同時にあの連中を八つ裂きにしてやりたい衝動に駆られる。


しかし、姫様の弟であらせられるリュカ様が平和の為を想い交した条約を、この代で無駄にする訳にはいかない。


(よりにもよって、何故姫様は向こう側に転生してしまったのか………)