今からおよそ、八年前の頃ーーー。

とある街中のカフェ。お昼頃なのだが、平日のためかそこそこ広い店内に人はそれほどいない。

美しい黒髪を揺らし、黒いチェックのシャツにベルトのついた深い青のパンツスタイルの女性が迷うことなく店内に入る。すると、近くに座っていたサングラスをかけた男性が立ち上がり、ペコリと女性にお辞儀をした。

「わざわざ来てくださり、ありがとうございます」

男性がサングラスを取ると、整った顔立ちがあらわになる。女性はニコリと微笑んだ。

「大丈夫です。診療所に来れない方にはこのようなサービスをさせていただいていますので」

女性は、男性の左斜め前の椅子に座る。これから二人で食事をしながら話をするのだ。

「このカフェのカレーが大好きなんです!」

「じゃあ、私もカレーにします」

男性が嬉しそうにそう言ったので、女性も微笑んでそう言う。男性はますます嬉しそうな顔を見せた。