あたしは駆君が言うように、駆君が近くにいるだけで、悔しいけどドキドキしちゃう。



「駆くん、ちょっといい?」


「ん?」


掲示物を眺めていた駆くんがくるりとあたしを向いた。


そばに歩み寄って、駆くんの袖口に手を伸ばす。


「こっち、来て……」


頼りないあたしの声は、全然駆くんみたいに、ペースをかっさらえそうにはないけど。


でも、あたしばっかりドキドキするのなんか嫌。


「……駆くん」


「どうした?」


……こんなに近くてもだめ?


あたしは、結構恥ずかしいのに。


これより近づくって、もう抱きしめるしか浮かばない。


あたしはそーっと、駆君に両腕を伸ばした。


そしたら。


「だっこ?」



そんな予想外の言葉が聞こえて。


駆くんの両手があたしの背中に回った。
香水の甘い匂い。
駆くんの硬いからだとか。


わけわかんないくらい、心臓が速まっていく。


「きゃあっ」


ひょいっと簡単にあたしを持ち上げた駆くんは


「あ、お姫様抱っこのほうがよかった?」


真っ赤な顔のあたしを見て、意地悪に口角をあげるでしょ?