「はい、ではホームルームはこれにて終了します。1時間目の準備をして下さい。で、星名さんはちょっとだけカモン」



みんなの視線が痛い。


ま、色々ありましたからねぇ。


小宮先生に呼び出されたのもきっとそれ関連だろうけれど。


わたしのクラスは席替えをし、わたしの席は廊下側の1番後ろになった。


わたしはそそくさと教室を出た。



「星名さん、あのことでお話ししたいことがあって...」



今日の小宮先生はいつになく歯切れが悪い。


なんか、嫌な予感がする。


何を言われても良いようにわたしは身構えた。



「全ての防犯カメラの映像を調べたんだけど、犯人らしき人物の映像が全く写っていなかったの」


「えっ...」



そんなはずはない。


わたしは確かにいじめられ、傷を負った。


今でもこの傷は痛む。


嘘なんかじゃないんだ。


なのに、どうして...。



「ここ数日間の記録が消去されていたの。文化祭の次の日の9時には作業に取りかかったから、犯人が文化祭の夜に忍び込んで消去を隠滅したんじゃないかと」


「でも、その前の記録はあるんですよね?何かしら写っているのでは?」


「それがね、犯行が行われた数分間の記録だけ消去されてるのよ。星名さんには本当に申し訳ないけど、これ以上どうしたらいいか...」



小宮先生がうなだれる。


わたしのせいで先生を不幸にしてはならない。



「先生、わたし、もういいです」


「えっ?」


「証拠が無いなら手の打ちようが無いじゃないですか。なら、終わりにしましょう。仕方がありません」


「でも...」


「わたしは大丈夫です。許すことは出来ませんが、過去のことに捕らわれ続けるのも嫌です。だったらわたしは未来を変えたいです。これ以上いじめが起こらないようにすることこそ、今やるべきことだと思います」



小宮先生の目にはうっすらと光るものが見えた。


わたしはもらい泣きなんてしない。


その代わり、笑うんだ。


幸せを呼び込むんだ。


スマイルパワーでハピネスチャージ!


なんて、どこかの女性戦士みたいな台詞。



「星名さん、本当にごめんね。そして、ありがとう。私もいじめのない学園作りを頑張るわ」


「一緒によろしくお願いします」



わたしと先生は固い握手を交わした。


わたしは小宮先生を信じます。


転校生のわたしを最初に温かく迎えてくれた先生だから。