法医学研究所で意識を失って倒れた霧島藍(きりしまあい)の周りに、多くの人が集まる。

「霧島さん!霧島さん!」

アルバイトで来ている医大生、河野大河(こうのたいが)が藍に呼びかける。しかし、藍はピクリとも反応しない。

「医務室に連絡した!もうすぐ来るはず」

藍と同じ監察医の木下朝子(きのしたあさこ)が大河に言い、藍に「大丈夫だよ」と声をかける。

藍の手を大河はそっと握った。



山に囲まれた小さな村。藍の生まれて育った場所だ。

縁側でどら焼きを食べながら、まだ幼い藍は自分より背の高い男子と話していた。

「藍の将来の夢は何なんだ?」

男子が訊ねると、藍はニコニコ笑いながら「お嫁さん!!」と答える。男子は「そうか」と微笑み、藍の頭を撫でた。藍は嬉しそうに笑う。穏やかな時間だ。

「俺、将来は監察医になろうと思ってるんだ」

「かんさつい?」

「死んだ人のお腹を切ったりして、その人の死んだ原因を突き止める仕事なんだ」