ある女性は、大きなキャリーケースと共に、フランスの都へ来ていた。

エッフェル塔や凱旋門、シャンゼリゼ通りには見向きもせず、彼女は姿勢良くどこかへ向かっている。

今日のフランスの空はグレーで、パリの街もその色を反映させたかのように、全体的に暗くどこか哀愁を漂わせていた。

彼女は、ある建物を見つけると看板に書いてあるフランス語を確認してその中に入っていく。

その建物はどうやらホテルのようだった。

しばらくすると、彼女は先ほどよりもコンパクトな鞄を肩に掛けて、ホテルから出てきた。

異国の地にも関わらず、戸惑っている姿は見受けられず、彼女からはどこか余裕な雰囲気さえ感じる。

すると、彼女は一旦スマホを確認してまた再びどこかへと歩き出した。

彼女は、先程と同様に風を切るように歩く。

それは、一切観光客のような浮ついた雰囲気を作らずに、一言で言うと「かっこいい」雰囲気を作っていた。

そんな彼女はお腹が空いていたのだろう、赤色を基調としたレストランへ入ると慣れたフランス語で注文をする。

レストランの中では皆ゆったりと話をしながら食事を楽しんでおり、日本のせかせかした雰囲気とは真逆の雰囲気を感じることができた。

見ることのできる一人一人の表情は、非常にリラックスしており、食事というよりもその会話やコミュニケーションを楽しんでいるように見える。

彼女は1人スマホを取り出して画面を見ると、1つため息をついてまたそれを鞄の中にしまった。