「あ、あんたさ、ヴァイオレット・ヘーデルヴァーリ?」

相談所を閉め、家へと帰ろうとしたヴァイオレットは、背の高い銀髪の男性に呼び止められる。

「はい。私は、ヴァイオレット・ヘーデルヴァーリです」

ヴァイオレットがそう言い微笑むと、男性は安心したようにため息をつく。そして、「ちょっと花を贈りたいんだけどさ……」と話し始めた。



男性の名は、ギルベルト・ウェールズ。自動車の会社に勤めていて、その仕事はとても忙しい。

そんな彼は、何年も前から一緒に暮らしている彼女がいる。ロメリア・ロス、代筆屋で働いている。

ロメリアはとても優しく、いつもギルベルトのことを一番に考えてくれる人だそうだ。体調を気遣い、わがままを言うこともない。ギルベルトは申し訳ないと思いながらも、ロメリアに甘えていた。

そんなロメリアと、今ギルベルトは喧嘩をしている。もう一週間も口をきいていないそうだ。

喧嘩の原因は、ギルベルトの同僚たち。その日、ギルベルトは同僚たちと酒場が閉まる時間になるまで酒を飲んでいた。