『やっぱり来てる。』
 『こんなところに呼び出してどういうつもり?』

 薄暗い会議室。小声でも声が響く…

 『だって、先輩がそうしてほしそうだったからね』
 文月くんがニヤニヤしながら私に近づいてくる。

 『何言って…んっ』
 
 急に耳を甘噛みされた。

 『先輩の熱視線気づいてたよ。』

 耳元に暖かい息がかかりぞくっとした。コイツわかっててわざと他の女子社員と話してるよね。わかっているのに。

 『…んっ…』

 今度は耳をなめられて、涙目になってにらみつける。

『ふふっ、たまんないね、顔。エロ』
『やめてよ』
『本心じゃないくせに』
『……』

 悔しいけどドキドキが止まらない。

『おとなしくここまで来た先輩にご褒美あげなくちゃね』

 そういいながら唇が近づいてくる。甘い刺激を期待して目を閉じる。

 が、期待した刺激がなかなか来ない。目を開けると、文月君のドアップが。唇まで1センチ。寸止め状態。

『っ!』
『何?キスされると思った?』
『…っひど!』

 キス待ち顔見られてた!はずかしすぎる!ヒドイ!

『…俺もがまんできなくなっちゃうからね…』

 ぼそっと聞こえた。

『え?』
『今日仕事終わったらメシ行こ』
『え?』
『返事は?』
『わかった』

 おでこにキスして行っちゃった。勝手に呼び出して勝手に約束してホント自分勝手なんだから。こんなに意地悪されても嫌いになれない。惚れた弱みかな…なんだかんだ言って優しいんだもん。もー終業時間までドキドキが収まらないよ。

 あ、これも文月くんの狙いなのかも…!