ケータイ小説 野いちご

恋の休日

 史菜(ふみな)が同じ職場で仲良しの先輩でもある玲人(れいと)と仕事が終わった後、書店で偶然会った。
 お気に入りの漫画の新刊が出たのでそれを買いに行こうとしたとき、玲人は一冊の本をパラパラと読んでいる。
 それを史菜が横から覗き込むと、生物に関する本で魚のページを開いたまま。

「今度水族館へ行かない?」

 唐突の玲人の誘いに史菜は返事が遅れた。

「急にどうして?」
「この本の写真が綺麗だから、行きたくなったんだ」

 たったそれだけの理由で水族館へ行くことを決断するので、史菜には到底真似できないこと。

「いつ行く?」
「次の休みでいいんじゃない? 僕も会社休みだし」
「うん」

 当日、史菜と玲人は約一時間かけて水族館に到着した。
 入館料を払って中に入ると、最初に目に飛び込んできたのは回遊魚。
 史菜の喜ぶ姿はその辺ではしゃいでいる小さな子ども達と同じなので、玲人は史菜の背後でくすっと笑った。

「どうして笑っているの?」
「史菜ちゃんを見ていると、俺、小学校の先生になったみたい」
「どういう意味?」

 首を傾げて、それ以上史菜に何も言わなかった。

「もう少しでお昼になるけれど、どうする?」
「もうそんな時間?」

 玲人の時計を見せてもらうと、三十分後にちょうど十二時になる。

「十二時になったらどこかで食べない?」
「いいよ。食べに行くならここにしない?」

 パンフレットに書かれているレストランを指でトントンと叩き、史菜も喜んで頷いた。このレストランは大水槽を眺めながら、ゆったりと食事をすることができる。

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