「どうして、自殺じゃないって思ったんですか?」

山本咲の解剖の準備をする藍に大河が訊ねる。その横には如月刑事と原刑事もいた。

「遺体の爪は、全く汚れていなかった。トリカブトの毒は葉や花にもあるけど、最も強力なのは根っこ。確実に死ぬつもりなら、山本さんはトリカブトを掘るはず。そうすれば爪の中に土が残る。でも、あの遺体は爪がきれいだった。それに、花や葉のかけらが落ちていたのも何となく気になる」

淡々と言う藍に、如月刑事は「さすがだ」と微笑む。大河がそれを睨みつけた。

「午後二時三十分、解剖を始めます」

藍がそう言い、朝子たちはメスを手に取る。大河はカメラを手に、真剣な表情になった。

トリカブトによる死因は、心室細動や心停止。血液を調べなければトリカブトの毒は検出されない。

「心臓の血液量、右が……」

「血液採取します」

黙々と解剖が進む中、如月刑事と原刑事はその様子を見守っている。

「霧島、ちょっといいか?」

聖が山本咲の手を持ち上げ、言った。