「ーーちゃん、琴ちゃん」


ユラユラと揺れる身体と母の呼ぶ声

フカフカで温かい
ん〜やっぱりお布団最高ーーー


「琴ちゃん!」


「ん?」


「起きて」


「おはよう」


「おはようじゃないわよっ」


少し呆れた母の声に
段々と頭が覚醒してくる


「あーーーーーーっ」


ガバッと起き上がると
大きな花柄のワンピースに
アイボリーのニットのカーディガンを羽織った見目麗しい母がいた


「えっと、えっと」


頭を抱えながら
ゆっくりと景色を巻き戻そうとするのに

驚いた顔の母と同時に見える
和風過ぎる違和感しかない部屋に

寝起きの頭がパンクした


「・・・ここ何処?」


「堂本さんの家」


「堂本さんって?」


「再婚相手」


「あ、あの人は?」


「あの人?」


「迎えに来た恐怖の魔王様よ!」


「ブッ、は?魔王様?」


私はなんてことを口走ってるんだ


「あ、じゃなくてリキ、さん?」


「あ〜理樹君ね、琴ちゃんのお兄ちゃんになるの、仲良くしてね」


「は?へ?お兄・・・ちゃん?」


あぁ、神様
これ以上の情報は今日一日では無理です


「お母さん、今日は無理!
帰ろう・・・んで
また出直そう?」


とりあえず母の手を掴んで
説得を試みるけれど


「は?琴ちゃん大丈夫?」


全く取り合ってもらえそうにない


「当日の朝に伝えたのは謝るけど
あんまり早いと琴ちゃん
もっとパニクるでしょ?」


「へ?」


ゆっくり深呼吸する


あ・・・そっか


お母さん・・・
あんた間違いなく私の母親だよ

今朝からとっ散らかった私の
挙動不審な態度は

パニックだったんだ・・・


そっか


情報処理能力不足だ・・・。