五月、新緑が眩しいポカポカした陽気。
そよそよ吹く風がとても心地よくて、過ごしやすい季節になったなぁとしみじみ感じる。
晴れているというだけで心が弾んで、笑みがこぼれる。
今日もいいことがありますように……。
「叶ちゃん、おはよう」
朝、学校の昇降口に着くと隣のクラスの友達に声をかけられた。
登校時間のラッシュだから、ワイワイガヤガヤ騒がしい。
「おはよう」
「ねぇ、聞いてー! 虎ちゃんと喧嘩したの!」
「え? どうしたのよ?」
「はぁ」
これみよがしなため息を吐く彼女の名前は、市口咲彩(いちぐち さあや)。
咲彩とは二年生の時に同じクラスだったことがきっかけで仲良くなった。
三年ではクラスが離れてしまったけど、こうやって毎朝のように顔を合わせているから不思議と寂しくはない。
とてもかわいいあたしの親友。
「それがさ、昨日あたし、虎(とら)ちゃんとのメッセージのやり取りをしてる途中で寝ちゃって、返事ができなかったのね。で、朝起きたら機嫌悪くなってんの。それぐらいでスネないでほしいよー!」
最近の咲彩の話題といえば、付き合って三カ月になる彼氏の末永(すえなが)くんのことばかり。
なんだかんだ言っていつも仲良しの二人は、学校中の憧れのカップルとしてすごく注目されている。
「末永くん、子どもみたいだね」
「でしょ?」