静と付き合ったのは、高校三年生の夏。

7月頭から8月末までの2ヶ月弱という短い期間だった。



その間、夏休みも私はほとんど補習とバイトで、彼は部活や塾と、ふたりの間には恋人らしいことは大してなかった。

電車通学の私と、自転車通学の彼。

学校から駅までの道のりを時々一緒に帰っても、彼の手は自転車を押すことでふさがっており、手をつなぐこともなかった。



教室ではそれなりに普通に話せるのに、ふたりきりになるとお互い黙ってしまう。

そんな彼との無言の時間すら、今思うとくすぐったかった。