「いらっしゃい」
大通りから少し入った所にある、あまり目立たない木目の扉を開けると、クラッシックが流れるバーがあった。

一年程前に、仕事帰りにフラリと立ち寄った一軒のバー。
名前は「琥珀」

落ち着いた、隠れ家的な店で、居心地も良く酒も美味しくて通うようになった。
常連と言うには頻度は少なめだが、一年も通えば顔を覚え貰えた。

目的は勿論上手い酒だが、他にも訪れると何も言わずにいつも最初の一杯を出してくれるマスター。
名前は小杉といい、低音の耳に心地の良い声と、大人の男性のかもし出す落ち着いた雰囲気が良く似合う、素敵な男性だ。

そしてもう一つ、琥珀に通う楽しみが半年程前に加わった。
今日も入り口から一番遠い壁際のカウンターに座って、一人静に酒を愉しむ男性。

暗がりにも分かるとても整った容姿で、他の客からもチラチラと視線を集めている。
最初は待ち合わせか何かだろうと思っていたが、自分と同じで酒を飲む為に来ているようだ。

出会う頻度は少ないのだが、出会えた日は、目の保養にとチラチラと男性を眺めるのが癖になっている。