『和泉くんってさ、当て馬だよね』
「……なに急に」
昼休み、友達の恵梨とお弁当を広げている途中で、ふと2人の生徒に目がいった。
橘 香菜さんと和泉 棗くん。
2人は幼馴染みらしく、それはそれは仲が良い。
橘さんが困ってたら、必ず和泉くんは駆けつける。
和泉くんイケメンだし、橘さんも顔は中の上って感じだけど性格可愛いし、お似合いだ。
傍から見たらカップルみたいな2人。
カップルじゃないけど。
だって橘さんには、勉強も運動もできるハイスペックな彼氏がいるから。
「橘さん」
「真鍋くん!」
真鍋 時久くん。
これまたイケメンな特進科の生徒。
私たちは普通科で、特進とは棟が違うから滅多に会うことはない。
橘さんと付き合ってからはちょくちょく来るようになったけど。
『和泉くん、橘さんのこと好きだと思うんだ』
「そうでしょ」
だよね。
好きな人見る目よね、あれ。
橘さんは気づいてないだろうけど、彼氏の真鍋くんは気づいてんなぁ。
和泉くんのこと敵視してるっぽいし。
そりゃそうか。彼女の幼馴染みってだけで警戒するよね。
和泉くん結構ちょっかいかけてるし。
面白半分でやってるように見えるけど、和泉くん本気なんだろうなぁ。
『和泉くん、幸せになってもらいたい』
「それ何回も聞いた」