「ご苦労様。今日が最後の1日前の授業です。皆さんは、もう就職も決まり心ここにないかもしれません。ですがなんてざまでおましょう。少なすぎます。舐めてたらあかへんよ。社会人としての……」

 「出席をとりまーーす」

 「おほんえほん、今生徒から声が上がりましたので出席をとります。なめんなよ。おほんこほん……、渡辺さん!返事はすぐに」

 生徒の中で、緊張が走った。橋本先生が名簿の後ろから出欠をとりだした。

 「は、は、はーーい!渡辺いまーす!」

 「山本五十六は戦艦大和!」

 返事を準備していた山本明がずっこけた。

 「あーい、はーーいいや、五十六はいません!明です!山本明がここにいまーす!」

 「松本さん!」

 「いませーーん!」

 「本田さん!」

 「いませーーん!」

 「橋本!」

 生徒間でざわめきが起こった。

 「はい!!それは私です!!」と橋本先生が乗り突っ込みをした。

 俺は少し面白いと思っていた。この先生は表情を変えないので、ボケかマジか分かりにくい。いつも橋本先生のボケらしきものに心の中で、突っ込みを入れている。結構成立しているので、先生には、相方が必要だと思っていた。

 「大西さん!」 

 「……」

 「大西さん!」

 まだまだだと思って返事の用意をしていなかった。今日は、出席者が少なかったのを忘れていた。
 
 ふぁぁ~~い?慌ててたので声が出ない。
 
 「いませーーん」と他生徒が言った。


 「あれ?いたの?声小さ。透明人間か!」教室がざわめきだした。

 「いたの?いるの?存在薄っ!」


 「大西さん!!いるのは分かってます。学年通して全て、大西さんは、無遅刻無欠席ですからね」

 俺は目立つのも嫌だし、からかわれるのも嫌なので、しぶしぶ立ち上がって右手を挙げて、はいっと言った。



 「そうなんだ。あいつ1年生から無遅刻無欠席だったんだ」さらに教室がざわめいた。