2日後に迫った文化祭の準備で
慌ただしい校舎の前。

みんなが大きな材料にペンキを塗って
看板や演劇に使う背景の準備をしている。

「白石さん!赤のペンキ持って来てもらえる?」

「うん!わかった!」

急いでペンキを取りに行くと

「危ない‼︎」

誰かの声が響き渡った。

頭上を見上げると大きな背景画が
私に倒れかかってきた。

背景画を運ぶときに生徒2人がバランスを
崩したようだ。

『私の人生ここで終わった…』

逃げる余地などなく
覚悟を決めて目をつむった瞬間…。

背景画と私の間に誰かが滑り込み
私を庇ってくれた。

「大丈夫?」

顔を上げると田島くんが心配そうな顔で
私を見ていた。

「…大丈夫。」

混乱した頭でかすれるような声で答えると

「痛っ!」

田島くんが顔をゆがめる。
私を庇ったときに腕を痛めてしまったみたいだ。

田島くんが心配で保健室まで付き添った。

保健の先生は手当てを終えると
体調不良の生徒がいると
別の生徒に呼ばれ
慌てながら出て行ってしまった。

まともに話したことのない
田島くんと保健室でふたりきり…。

…気まずい。

『まずはお礼を言わなきゃ!』

「助けてくれてありがとう。
怪我させちゃってごめんね。」

「気にしないでいいよ。
白石さんが怪我しないで良かった。」

そう言って優しく笑うと田島くんは保健室を出て行ってしまった。

『なんで私なんかを助けてくれたんだろう?』

田島くんとは小学校から一緒で
同じクラスになったことはあるが
人見知りの私が人気者の田島くんと関わることなんてなかった。

結局、それからずっと理由を聞けないまま
今に至る。