歩道のど真ん中を歩いている"彼"の周りには、ジャキ、ジャキ、と金属の音を立てて大勢の人が歩いている。中には話し声や、笑い声なども聞こえてくる。金属の音....その正体は、銃器や鉄装備、そして剣や刀が揺れ、鞘とぶつかり合った音などだ。そう、この街は...いや、この世界は闘技場が中心となって動いている。もはや、ここに住んでいる者の中で、闘技場を知らない者はいないだろう。その者たちの中には、戦場を愛し、自分の人生そのもの、と言う者までいる。
"彼"も闘技場では、よく戦っている。これは"彼"の意思ではなく、この国の王に命令されてやっている。その王は、"彼"より背が高く、少し老けている。つまり、先程"彼"の肩に手を置き、いつもながら会話を持ちかけてきたあの男だ。
"彼"はあの城で育ったわけではない。だが、"彼"は あの出来事 を、覚えているだろうか。
そんなことはさておいて。明日も闘技場で試合がある。試合といっても、ただの殺し合いだが。なので、"彼"は明日のために、身体を休めないといけない。"彼"はいつも、城で過ごしている。そこに休める場所があるからだ。今日も"彼"はそこで休む。