「綾、今日暇でしょ?実は智也くんの勉強みてほしいって、向こうの親に頼まれてるの。だから今日行ってあげなよ」


夏休みに入り一週間ほど経った休日のある日。
教師にとったら最初の休みの日に、お母さんはそんなことを言ってきた。


「なんで!?智也、夏期講習も参加してるし、賢いし。
なんなら学年トップなんだよ?私が教えるとこなんてないでしょ」


あの日以来、智也と顔を合わせるのが気まずかったりする。
自分が招いたことなんだけれど。

「いいからこの手土産持って行ってあげなさい。あんたそれでも智也くんの幼なじみ?あんなイケメンの幼なじがいて、お母さん羨ましいわぁ」


ダメだ。
お母さんの話がずれている。


「嫌なもんは嫌」


この家に私の味方はいないことに気づく。
だから先生と生徒って関係がどれだけ重要か、全然わかってくれない。


それなら一人暮らしすればいいんだけれど、教師になる少し前に親に言えば、『1年目は心配だから実家から通いなさい』と言われたのだ。


一応大学時代は一人暮らしだったというのに。
教師の仕事が私に向いてるか心配らしかった。