風に揺らされた桜の木。
そこから切なく、綺麗にふわりと落ちる桜の花びら。
その後ろに体育館があるんだ。
「……」
私は桜と共に、3年間お世話になった体育館を微笑みながら眺めていた。
…綺麗…
「花那!」
「あ、永樹!」
永樹は、私を見つけて口元をニッとさせながらこっちへ歩いてくる。
永樹の胸には私と同じ花がついていて、
ぎゅっと何かしめつけられたような気分になる。
…ん?
なぜか、永樹は片手を背中に隠している。
…なんか隠してる…?
「永樹なにもってる_」
「じゃんっ」
永樹が突然嬉しそうに私の前に差し出したのは、
少し傷の入った、見慣れたバスケットボールだった。
「最後にやらね?」
そう言って永樹はいつもと変わらない笑顔を見せる。
「賛成!」
「…体育館イスでいっぱいだし、グラウンドだけどなっ…」
永樹が、後ろ髪をくしゃっとするとへへっと笑う。
私は永樹がいつもするその癖を見て、ふっとはにかんだ。
私と永樹とバスケットボールがあったらどこでだってバスケするよ。
「あははっ…いいじゃん、外にもゴールあるし!」
どこでだって楽しいよ。
「それによく体育館使えないときグラウンドで練習してたじゃん。」
「…確かに。」
永樹は今までを大切に想うようにくすっと笑った。
私は花がついたブレザーを脱ぐとグラウンドの端に投げる。
…よしっ
「こいっ」
私がディフェンスの構えをすると永樹はニッと嬉しそうに笑った。
…ははっ…いつもの永樹だ。
永樹はブレザーをバッと脱ぐと私と同じように端にぽいっと投げた。
「いくよ?」
「…っ」
永樹が私に向かって真正面にドリブルをつく。
…これなら止めれる…
けど…
永樹はいつもそこで終わらないっ……
「…よっ」
永樹はサッとフェイクをすると、楽しそうに口元をニッとさせた。
…右っ
右と先を読んだ私が右に動くと、永樹がそのまま左でまっすぐゴールに向かう。
「…っ」
_バシュッ
「…うーーーっ」
「…永樹もっかい!」
私はシュートが決まったゴールを見つめて言う。
…永樹はやっぱりフェイク上手いなぁ…
…?
私は永樹から返事が返ってこないことに不思議に思い、
そっと振り返る。
………
「…永樹?」
振り返ると、永樹は見たことがないくらい優しい笑顔で私を見つめていた。
…?
なに?その笑顔。
見たことな_
「花那すき。」
…………
「…は?!……え、今なんていった?!好きって_」
_パシッ
永樹は私の言葉を遮るようにパスをした。
「お前は?」
永樹はそれだけ言うと、ディフェンスの構えをしてまたニッと笑った。
…私は…
「こいっ」
「…っ」
永樹のワクワクした声がした後、私は勢いよくドリブルをついた。
私は頭が悪いから、とにかく速く、速く、
頭では永樹には勝てない。
だから…
スピード勝負っ!
「…っ」
永樹はそれでも私にピタリとディフェンスをする。
…っ
ピタリとディフェンスしてるってことは、
今の勢いから止まったとき、
一瞬だけずれるその瞬間_
チャンスがくる…
_ギュッ
私はぎゅっと足を止めるとシュート体勢に入る。
永樹は、予想どうり少しずれてくれた。
…入れ
私は、ボールをゴールに投げる。
バスケでは永樹にはいつも負けてばかりだった。
でも私だって、
この気持ちは_
永樹にだって負けないんだからっ…
「私も好きっ」
_バシュッ
………
…入った………。
「…同点…だな」
永樹はそう言っていつものようにニッと笑う。
昔からずっと変わらない、
口元をニッとさせる笑顔が私は大好きで、
ずっと見てきたその笑顔はどこか安心すら感じて、
私はこの時
あぁ、好きだなって
大好きだなって
永樹と過ごした思い出も、
仲間と過ごしたこの体育館も、
真剣になってバスケした毎日も、
先生に怒られた毎日も、
放課後に永樹と自主練した毎日も、
帰りに皆でアイスを頬張ったのも、
全部、全部、
大好きだ。
「……っ……」
「………あー…はいはい…」
_ぎゅ
永樹は何も言わず私を抱きしめてくれる。
「……っ…泣いてないからっ」
「は?!めっちゃ泣いてんじゃんかよ!嘘が下手すぎんだろ。嘘にもなってねぇ。」
「はは……」
私はいつもの会話にそっと笑顔がこぼれた。
「もう一回するんだろ?」
「…あったりまえじゃんっ…」
私は永樹みたいにニッと笑ってみる。
すると、永樹は私の目元に残っていた雫を制服の袖でそっと撫でるように拭いてくれた。
_ドキッ
「あっ!おい永樹!花那!俺らもまぜろーーっ」
「永樹ー!花那ー!私達も!皆でやろう!」
気がつけば仲間達が集まってきて、私はおもわず笑顔になる。
気がつけば、グラウンドには卒業式が終わってからも卒業生でいっぱいだった。
「お前らーーっ、先生達怒られんだけど?早く帰れーー」
先生達もそういいながら笑顔で、
やっぱり皆寂しくて、離れたくないんだよね。
「えーーっ先生もやろう!」
でも今は笑顔で、皆の事を見よう。
ブレザーについた、色鮮やかな花がきれいだね。
きっと、この瞬間や景色は今しかないんだ。
_ピタ
「わっ」
ひんやりとしたものが頬に当たる。
つめたーっ
「もー!急になに_」
「いちごのアイス」
永樹はそれを私に差し出すと、いつものようにニッと笑う。
「…ありがと」
お別れはすごく切ないけれど、
また次のステップへ進む勇気を。
共に歩いてた仲間達はきっと、
これからもずっとかけがえのない存在になるんだね。
「俺らもいこーぜっ」
_さぁ
ここから_
「…うんっ」
まだまだ、グラウンドは賑やかです。
そこから切なく、綺麗にふわりと落ちる桜の花びら。
その後ろに体育館があるんだ。
「……」
私は桜と共に、3年間お世話になった体育館を微笑みながら眺めていた。
…綺麗…
「花那!」
「あ、永樹!」
永樹は、私を見つけて口元をニッとさせながらこっちへ歩いてくる。
永樹の胸には私と同じ花がついていて、
ぎゅっと何かしめつけられたような気分になる。
…ん?
なぜか、永樹は片手を背中に隠している。
…なんか隠してる…?
「永樹なにもってる_」
「じゃんっ」
永樹が突然嬉しそうに私の前に差し出したのは、
少し傷の入った、見慣れたバスケットボールだった。
「最後にやらね?」
そう言って永樹はいつもと変わらない笑顔を見せる。
「賛成!」
「…体育館イスでいっぱいだし、グラウンドだけどなっ…」
永樹が、後ろ髪をくしゃっとするとへへっと笑う。
私は永樹がいつもするその癖を見て、ふっとはにかんだ。
私と永樹とバスケットボールがあったらどこでだってバスケするよ。
「あははっ…いいじゃん、外にもゴールあるし!」
どこでだって楽しいよ。
「それによく体育館使えないときグラウンドで練習してたじゃん。」
「…確かに。」
永樹は今までを大切に想うようにくすっと笑った。
私は花がついたブレザーを脱ぐとグラウンドの端に投げる。
…よしっ
「こいっ」
私がディフェンスの構えをすると永樹はニッと嬉しそうに笑った。
…ははっ…いつもの永樹だ。
永樹はブレザーをバッと脱ぐと私と同じように端にぽいっと投げた。
「いくよ?」
「…っ」
永樹が私に向かって真正面にドリブルをつく。
…これなら止めれる…
けど…
永樹はいつもそこで終わらないっ……
「…よっ」
永樹はサッとフェイクをすると、楽しそうに口元をニッとさせた。
…右っ
右と先を読んだ私が右に動くと、永樹がそのまま左でまっすぐゴールに向かう。
「…っ」
_バシュッ
「…うーーーっ」
「…永樹もっかい!」
私はシュートが決まったゴールを見つめて言う。
…永樹はやっぱりフェイク上手いなぁ…
…?
私は永樹から返事が返ってこないことに不思議に思い、
そっと振り返る。
………
「…永樹?」
振り返ると、永樹は見たことがないくらい優しい笑顔で私を見つめていた。
…?
なに?その笑顔。
見たことな_
「花那すき。」
…………
「…は?!……え、今なんていった?!好きって_」
_パシッ
永樹は私の言葉を遮るようにパスをした。
「お前は?」
永樹はそれだけ言うと、ディフェンスの構えをしてまたニッと笑った。
…私は…
「こいっ」
「…っ」
永樹のワクワクした声がした後、私は勢いよくドリブルをついた。
私は頭が悪いから、とにかく速く、速く、
頭では永樹には勝てない。
だから…
スピード勝負っ!
「…っ」
永樹はそれでも私にピタリとディフェンスをする。
…っ
ピタリとディフェンスしてるってことは、
今の勢いから止まったとき、
一瞬だけずれるその瞬間_
チャンスがくる…
_ギュッ
私はぎゅっと足を止めるとシュート体勢に入る。
永樹は、予想どうり少しずれてくれた。
…入れ
私は、ボールをゴールに投げる。
バスケでは永樹にはいつも負けてばかりだった。
でも私だって、
この気持ちは_
永樹にだって負けないんだからっ…
「私も好きっ」
_バシュッ
………
…入った………。
「…同点…だな」
永樹はそう言っていつものようにニッと笑う。
昔からずっと変わらない、
口元をニッとさせる笑顔が私は大好きで、
ずっと見てきたその笑顔はどこか安心すら感じて、
私はこの時
あぁ、好きだなって
大好きだなって
永樹と過ごした思い出も、
仲間と過ごしたこの体育館も、
真剣になってバスケした毎日も、
先生に怒られた毎日も、
放課後に永樹と自主練した毎日も、
帰りに皆でアイスを頬張ったのも、
全部、全部、
大好きだ。
「……っ……」
「………あー…はいはい…」
_ぎゅ
永樹は何も言わず私を抱きしめてくれる。
「……っ…泣いてないからっ」
「は?!めっちゃ泣いてんじゃんかよ!嘘が下手すぎんだろ。嘘にもなってねぇ。」
「はは……」
私はいつもの会話にそっと笑顔がこぼれた。
「もう一回するんだろ?」
「…あったりまえじゃんっ…」
私は永樹みたいにニッと笑ってみる。
すると、永樹は私の目元に残っていた雫を制服の袖でそっと撫でるように拭いてくれた。
_ドキッ
「あっ!おい永樹!花那!俺らもまぜろーーっ」
「永樹ー!花那ー!私達も!皆でやろう!」
気がつけば仲間達が集まってきて、私はおもわず笑顔になる。
気がつけば、グラウンドには卒業式が終わってからも卒業生でいっぱいだった。
「お前らーーっ、先生達怒られんだけど?早く帰れーー」
先生達もそういいながら笑顔で、
やっぱり皆寂しくて、離れたくないんだよね。
「えーーっ先生もやろう!」
でも今は笑顔で、皆の事を見よう。
ブレザーについた、色鮮やかな花がきれいだね。
きっと、この瞬間や景色は今しかないんだ。
_ピタ
「わっ」
ひんやりとしたものが頬に当たる。
つめたーっ
「もー!急になに_」
「いちごのアイス」
永樹はそれを私に差し出すと、いつものようにニッと笑う。
「…ありがと」
お別れはすごく切ないけれど、
また次のステップへ進む勇気を。
共に歩いてた仲間達はきっと、
これからもずっとかけがえのない存在になるんだね。
「俺らもいこーぜっ」
_さぁ
ここから_
「…うんっ」
まだまだ、グラウンドは賑やかです。