【ティアナ、馬の前に飛び出したんですって?
駄目よ?馬は急に止まれないことの方が多いんだから】

【でも、体が勝手に……】

【でもじゃなくて、無茶しないの!
わかった?】

【うん、わかった。
気を付けるね】

次の日に中庭に行くといつもの動物達がティアナを取り囲み、初っぱなからお説教を始めた。
さすがにあの行動はティアナも危険だとわかっていたから素直に頷くが、中庭から出ていないはずの動物達が何故知っているのか……。

恐らくその様子を空や屋根で見ていた鳥達が言い回ったのだろう。
滅多なことは出来ないな、とティアナは苦笑した。

【それにしてもなんなの、あのクリスティーネという娘は!
貴族はそんなに偉いの?】

動物の世界は弱肉強食。
弱い者は強い者に従うというルールがあるからか、強さもないのに貴族という位にいるだけで偉そうにしている人間の力関係が今一わからないらしい。

【貴族っていうだけで偉いなら、生まれたときから偉いってことになるよね?】

【そんなのおかしいわ】

【身分が違うだけで、貴族はそんなに偉いの?】

動物達の純粋な疑問も聞きながらティアナも一緒に考える。

あの時のクリスティーネの態度と言葉は絶対に忘れない。
貴族と平民、生まれが違うだけであんな扱いされていいわけがないはずだと、ティアナは眉を潜めた。