息苦しくて目を覚ますと、見慣れない天井が見えた。

今は夜なのか室内は薄暗くて、窓から入り込む仄かな明かりが部屋を照らしている。

吐く息も体も熱くて、熱が出ているのが嫌でもわかる。
体を動かそうにもあちこちが痛くて動きそうになかった。

確か、崖から落ちて濁流にのみこまれたんだっけ……。

そこからどうなったのか覚えていないが、今部屋にいて、有り難くもベッドに寝かせてもらえていることから生きてはいるのだろうと安堵の息をつく。

「おや、やっと気がついたのかい?」

懐かしい声に微かに首を動かすと、今しがた入ってきたばかりの人物に思わず目を見開く。
そこには安心したような表情を浮かべたクヴェルの宿屋の女将さんが桶を持って立っていた。