くいくいっと目の前で庭仕事をしているオスカーの服を引っ張った。
驚いたオスカーはぱっと振り返り、相手がティアナだとわかると安心したような顔をした。

「ビックリした……。
どうしました?」

“お願いがあって来ました”

「お願い?なんでしょう?」

不思議そうに首を傾げたオスカーにティアナは予め用意していた紙を見せる。

“明日から暫くフライハイト国に戻ることになりました”

「え?明日から?
……急、ですね……」

“ユアン殿下の婚約者候補でもあるのに、ずっとこの国にいるのは不公平らしいので”

「なるほど……。
じゃあユアン殿下と一緒に戻られるんですか?」

“殿下は今日、おもてなしの準備で先にお帰りになります。
私は数人の護衛の方と明日のお昼に出ます”

「昼……数人の護衛……」

“暫く戻れないと思うので、動物達のお世話をお願いできますか?”

「あ、も、もちろんですっ!
僕は動物のお世話も兼任して雇われてるんですから」

最近、嫌われてますけどね。と苦笑するオスカーに“ありがとう”“ユアン殿下のお見送りに行ってきます”と二枚紙を見せてその場を去る。

少し歩いて振り返れば、オスカーがぶつぶつと何か呟いているのが見えた。