【オスカーは焦ってるわ】

【ありもしない秘密を探ってるんだもん。
見つかりっこないよ】

【ブリュッケル公爵も動き出したみたいだよ】

【娘のクリスティーネを王妃にして、さらに名声を得たいって言ってた】

【名声?食べ物?】

【違うよ。
……なにかわからないけど、ブリュッケル公爵にとっては大事なものみたいだね】

【クリスティーネも名声がほしいのかな?】

【クリスティーネは王妃っていう地位がほしいって小さいときから言ってたわ】

【地位なんかあってもお腹いっぱいにならないのにね】

【なるよ。
街の人よりおいしそうなの食べてるもの】

【そっか、だから地位がほしいんだね】

【あれ?ブリュッケル公爵の話はどうしたの?】

【あ、そうだったね。
ついにクリスティーネに言われて動き出したんだよ】

【どう動いたの?】

【それがね……】


チュンチュン、ピピピ、ニャーニャー、クークーと風にのって聞こえてくる動物達の声に耳を澄ませながら、ティアナはシュトルツ国の歴史の講義を窓を開け放した室内で受けていた。

「……今日の動物達はご機嫌なのかしらね」

窓の外に目をやり、微笑ましいこと。と微笑む講師に、“ええ、そうですね”と書いた紙を見せる。

動物達の“声”が聞こえない人にはわからない、楽しげに聞こえる鳴き声の内容は穏やかさの欠片もない内容だった。