「ねぇ、考えてみてよ!」

「何をだよ……」

「一生のうち、私ほど仁のことを好きになれる女の子が何人現れると思う!?」

「はぁ?」

私は、頭の先からつま先まで!
そりゃもう仁のぜーーーんぶが大好きなわけ。


なんなら、大きく吐き出されたその吐息(溜息)ひとつにすら愛しさを感じて、


今すぐ空中をすくって袋の中にでも閉じ込めたい衝動を必死に押さえているっていうのに。


「ねぇ、もっかい聞くけど。私の何がダメなの?どこ?ねぇ?どこ!?」

「そういうところだよ!分かれ!!」

「分かんないから聞いてんじゃ〜ん!」

「鬱陶しい!離せ!離れろ!あっち行きやがれ!」


仁に後ろから抱きついて離すもんかと力を込めれば、心底うざったそうに振り払われる。


私、高宮 杏菜(たかみや あんな)にはご覧の通り好きな人がいる。

───篠宮 仁(しのみや じん)。


毎朝同じ駅から、同じ時間に電車に乗って、同じ高校に通う、同じクラスの男の子。

おまけに篠"宮"と、高"宮"。

ほらね?もう運命しか感じないでしょ?


"偶然も、三度重なりゃ運命だ"って誰かが言ってたような気もしなくもないし。


いや、……誰も言ってないってんなら、私が言おう。