「あれ、陽菜姉。
言ってたCMってこんな感じだったっけ?」

先日撮ったシャンプーのCMが公開され、初めてその映像を見た朝陽は眉を潜めているのを見て陽菜は大きな溜め息をついた。

陽菜が朝陽に簡単に説明した内容とまったく違ったそのCMは、街中ですれ違った髪の綺麗な女性を呼び止めた男性が、その髪を一房手に取り口付け、綺麗な髪の貴女をずっと見ていました。と告白のような台詞を吐くと、驚いた女性の腰を引き寄せそのまま抱きしめるといった内容になっていた。

「全く違うよー!これは大堂さんのアドリブで……みんな、元の台本よりこっちの方がいいねってなって……」

このシャンプーも“恋される美しい髪”というキャッチコピーなので、突然のこのアドリブも問題ないとOKされてしまった。

ただ、撮影中も陽菜がずっと気になっていたことに朝陽も気付いたようで、とっくにCMが終わったテレビをずっと睨み付けていた。

「大堂、目、笑ってないよね」

「……うん……」

そう、大堂は顔は爽やかな笑顔を保っているのにその瞳は終始、一切笑っていなかった。

感情の見えないその瞳と撮影中の接触を思い出し、陽菜は自分を抱きしめる。
陽菜の不安そうな表情を見つつ、朝陽は手に持っていたスマホに素早く指を走らせた。