警察官という仕事は、いつ、どこで、何が起こるか知れないもの。

その“いつか”の為に備えは欠かせない。

ある日、千歩は警視庁の射撃場へ出向いた。

射撃の訓練を行う為だ。

パーンという破裂音が何発も響いている。

千歩意外にも訓練を行う警察官は何人もいる。

その中に秋人の姿もあった。

千歩と秋人は互いの存在に気付きながらも声を掛け合ったりしない。

ピアノ線をピンと張りめぐらせたような緊張感がこの場所には常にあるからだ。

千歩の番がやってきた。

拳銃を構えて、数メートル離れた的を狙う。

引き金を引いた瞬間、パーンと音が鳴って、銃弾が飛び出す衝撃が手先から腕全体に響いた。

銃弾は一瞬のうちに的を撃ち抜く。

「……」

千歩が狙おうとしていた場所とは少しズレていた。

訓練不足だろうか。