目を開けると、アタシは教室の中にいた。
「あ!目が覚めた?」
「だ、誰よ!アンタ!」
その時、私は手足が縛られているのに気がついた。
「あー。抵抗できないように縛り付けて置いたから。手を出されてケガでもしたら大変だし。」
「なんでこんな事するのよ!そんな事より早くアタシを解放しなさい!」
「もー。うっさいなぁ~。静かにしてよ~。」
「がはっ!」
足でお腹を蹴られ、ゲホゲホと咳き込んだ。
(何なの・・・・・・。コイツ!)
「さぁ!みんな~!すみれちゃんのお仕置きタイムが、はっじまるよ~♡」
「はぁ?お仕置き?何それ。」
すると、クラスメイトと見覚えのある3人が出てきた。
「あ!この子達見覚えあるっしょ?まさか、忘れてないよね?アンタが去年からいじめて自殺に追いやった3人だよ!」
(北川、間宮、原田・・・・!なんでいるの!?)
突然キーンという音が響き、それと同時に頭が痛くなった。
(な、何?これ・・・・・。)
「アンタなんかねー。生きてる価値なんてねーんだよ!」
これは、アタシの記憶?
「ごめんなさい!ごめんなさい・・・・・・。」
去年の春、いい子ぶってるのが気に食わなくていじめた北川千帆(きたがわちほ)。
「あ~マジイラつくわー。さっさと死んでくんない?」
アタシの好きだった男子と付き合い始めたことが原因でいじめた間宮音羽(まみやおとは)。
「見てみて!コイツの顔、豚みた~い!」
間宮が自殺した後、暇つぶしのためにいじめてた原田翔子。

(そうだ・・・・。アタシ・・・・・・。)
「これで分かった?それにしてもアンタって本当、クズ人間だよね~。3人を自殺に追い込んだくせに自分は関係なーいってしらばっくれちゃうんだもん。」
「チッ!コイツ・・・・・・!」
「自分の過ちに気づいた?だったら、土下座して謝んなさいよ!ねー。みんな!」
『だよねー。』『サイテー。』『土下座しろよー!』
(なんで?なんでみんなコイツの言うこと聞いてんの?)
「せーの!」
『土下座!土下座!』『土下座!土下座!』
『土下座!土下座!』『土下座!土下座!』
うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。
うるさい。うるさい。うるさい。うるさい!!
「謝っかよ!バーーーカ!」
アタシが叫ぶと、あんなにうるさかった土下座コールが一気に止んだ。
「だいだい、なんでアタシが土下座して謝んなきゃいけないわけ?悪いのは、この3人でしょ!?能力がないから、すぐひきこもったり自殺なんかするのよ!バッカじゃないの?アンタらは所詮、負け組なんだよー!!」
「ハァー。まだお仕置きが足らないのか~。みんな~!やっちゃって良いよー。」
「え?何?」
誰かに肩を押され、アタシはバランスを崩して床に倒れ込んだ。
それを待っていたかのように、みんなが向かってくる。
アタシはみんなに囲まれて集団リンチをうけた。
(やめっ!痛!)
顔、お腹、腕、背中、足。
みんなが笑いながらアタシの体を蹴った。
みんなが笑いながらアタシを罵った。
何分後かに集団リンチから解放された。
顔からは血が流れ、腕や足にはあざがある。
「くっ・・・・!」
「これで終わりじゃないよ。」
アタシの目の前にいた美沙が叫ぶと男子2人がアタシの腕と髪を掴んで無理やり椅子に座らせた。
顔を上げると、ハサミを持った間宮が立っていた。
「私、一度でもいいから他人の髪の毛切ってみたかったんだよねー。私の髪も無理やり切られたんだから良いよね?青山さん♪」
「やめて・・・・・!髪だけは!」
「そう言ってもあなたは聞かなかったでしょ?私の自慢だった長い髪を。」

「良いなぁ~!」
「ね!サラサラしてるよねー!」
「ねぇ、いつから伸ばしてるの?」
「しょ、小学生の時から・・・・・・。」
何にも取り柄のない私にとって、腰まで伸びた長い髪の毛は唯一自慢出来ることだった。
三つ編みやお団子とかにすると、みんなが褒めてくれた。
「羨ましい」「良いなぁ」って。
それが、何より嬉しかった。
「間宮さん。ちょっといい?」
「は、はい!」
休み時間、友達とおしゃべりしていたら隣のクラスの高橋君に呼ばれた。
連れて来られたのは、体育館の裏。
「間宮さん。俺と付き合ってください!」
(えっ!?)
一瞬、言葉が出なかった。
だって、気になってた男の子から告白されるなんて・・・・・・。
そんなこと初めて。
私は、顔が赤くなりながらも気持ちをはっきりと伝えた。
「はい!喜んで!」
でも、それを影で見ていた青山さんに私は気づかなかった。
次の日からいじめのターゲットになった。
今まで一緒にいた友達は青山さんの味方になり、1人ぼっち
の生活が始まった。
移動教室の時もお昼の時も体育のペア組を決める時も1人。
そんな私を見てみんなが笑っていた。
「嫌!髪の毛だけは、お願い!」
「うるせー!静かにしろ!」
腕を掴む高城さんと柏木さん。
そして、嘲笑っている青山さん。
ギョキギョキ・・・・・・。

無残に切られて散らばった髪の毛。
ボロボロと涙が溢れてくる。
そんな私を見て青山さんは、言った。
「良かったね~。みんなに笑ってもらえて!」
悪魔みたいな高笑いが聞こえた。
いつまでもいつまでも、その声は頭から離れなかった。
その夜、私はお風呂場で手首を切って自殺した。
(だから、私はあなたを許さない・・・・・・!私と同じ苦しみを味わせてやる!)
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ギョキギョキ・・・・・・。
「アハハハハハ!どう?少しは同じ苦しみが分かった?」
(間宮・・・・・・っ!てめぇ!)
「さてと!そろそろ終わりにするか~。もう少しで来るハズなんだけどな~。」
「おねーちゃ~ん!」
すると、7・8歳ぐらいの女の子が教室に息を切らしながら入ってきた。
「も~!遅いよ~!」
「ごめんごめん!だってコレ、重かったんだもん!」
アタシを無視してしゃべり続ける2人。
(え?何?コイツら・・・・・。てか、持ってんのタンク?何に使う気なの・・・・・・?)
「おねーちゃんに頼まれて持ってきたよ!とーゆ!」
(は?ちょっと待って・・・・。灯油?)
バシャッー!!
身体に灯油がかかり、臭い匂いがする。
すると、ポケットからマッチを取り出して火をつけた。
(え?まさかアタシ、殺されるの?ヤダ。そんなの嫌だ!)
アタシは、縋るように泣き叫んだ。
「やめてやめて!アタシが悪かったから!だからお願い!許して・・・・!!」
「許さないよ。心の傷は、永遠に消えないんだから。今更命乞いしようなんて無駄だからね。」
「そ、そんな・・・・・・。」
死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
「バイバイ♡すみれちゃん♪」
マッチが投げつけられ、アタシの身体はあっという間に炎に包まれた。
「ア"ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

(フフッ♪頂いていくわね。あなたの醜い心。)