「被疑者は女性だって事か…?」

比嘉特捜部長が、俺に尋ねる。

「まだ確定は出来ませんがね。
…っっ!?ぅえ…っ!」

匂いを感じ切った後、俺は嗚咽した。

「お、おい?大丈夫か?!」
難波さんがしゃがんだ俺の背中をさすってくれた。

「大丈夫、です。あまりにも念とか強いと
たまに吐き気とかしちゃうだけなんで。
コントロール出来るようにはなってきたんですけどね…。」

「大変なんだな、特性持ちは。」

そう言って難波さんが小さいペットボトルに入った水をくれた。
何となくその行為は、俺を理解してくれたように感じた。

「ありがとうございます。」

喉を鳴らしぐびぐびと一気に飲む干す。
俺が落ち着くまで2人が見ている。

「ひとまず、事務所に戻るぞ。
青山、お前も来い。」

「はい!!」

俺はバイクに再び乗り、2人が乗ったパトカーの後ろをついて走った。


ーーーーーー

ー[警視庁 特別捜査部 CSS 事務所]ー

本部から少し離れた場所に、
探偵事務所を改築して建てられた5F建てのビルの一室にそれはある。

ちなみに探偵事務所の看板はそのまんま。
俺が配属する[CSS]とゆうのは、
Caractoritycal Special Secret の略。

和訳するとダサいから敢えて言わないが、
簡単に言うと、公になっていない"特性"に関わる事件や秘密裏で行われている事件を扱っている。

「矢崎、今日は早いな。」

比嘉特捜部長が部屋に入るなり、
事務員の制服を着た20代半ばの女性に声をかけた。

「皆さん、おはようございます!
青山くんだー!やっほー!」

「矢崎さん、朝から元気だね。やっほ!」

明るく挨拶したその女性。

矢崎 円香(ヤザキ マドカ)25歳。
彼女は昔、誘拐事件に巻き込まれた所を比嘉特捜部長が保護し、それ以来ここで彼に恩返しとしてお手伝いをしているらしい。

「外は寒かったでしょう。
すぐに温かいお茶いれますね!」

ポニーテールの毛先を揺らし、
150センチの小柄な体でテキパキと急いでお茶をいれる準備をしてくれている。

「やっぱり女性が居ると、安らぐな。」

難波さんが黒革のソファに腰かけて言う。
俺は少し距離を空けて隣に座った。
比嘉特捜部長は部長デスクの椅子にかけて、
窓の外を見つめている…。

さっきよりも少し、雨が強くなってきている。
梅雨だからしょうがないんだけど。