「わぁ……綺麗」


誰もいないはずの家へ帰ると、真っ暗なはずのリビングがチカチカと光を放っていた。

ガラス抜きのそのドアを開くと、照明の代わりに光を放つ、巨大なクリスマスツリー。

その他にもリビングの至るところにささやかなイルミネーションがされていて、思わず入る足を止められた。

出掛ける前まではこんなのなかったのに、いない間に母親が飾り付けたのかもしれない。


「すごい……朝はなかったのに……」


同じ感想を口にする桃香の声を耳に、テーブルの上に目が留まる。

不思議に思いながら近付くと、15センチほどのホールの生クリームケーキと、メモが残されていた。


『桃香ちゃん&理玖Merry X'mas!』


母親の年甲斐なく丸っこい字に、思わず「ハァ」とため息が漏れた。