「毛糸? 毛糸で何かするの?」

「あ、うん、ちょっと欲しくて……。だから、売ってるとこ教えてほしいなって……」


放課後。

『手芸屋さんって、この辺りにあるかな?』

帰り支度を済ませてこころちゃんの席に行きそう聞いてみると、こころちゃんは不思議な顔をして私を見上げた。


「駅ビルの中に確かあった気がするけど……え、何で何で?」

「え、あ、うん。ちょっと、編み物しようと思って……」

「編み物⁈ え、桃香そういうのできるの?」


必要以上の大きな声でこころちゃんにそう聞かれ、ギクッ……。

すっごく得意なわけでもないけど、一応、編めなくはない。

控え目に「うん」と頷くと、こころちゃんは「えーすごい!」とカバンを手に席から立ち上がった。


「なになに、何編むの?」

「えっ……あ、うん、マフラーを……」

「マフラー⁈」