【夢愛side】
高校1年生の春。

電車で20分ちょっとの場所にある
第1志望だった高校に合格し
今日からJK生活が始まる!

「よぉし!!」

紺地に白と黒の
ギンガムチェックのスカートを
ハイウエストで履いて
ピンクのカッターシャツに
赤のリボンを付け
髪の毛は少し高いポニーテールに決めて
15分かけてバッチリナチュラルメイク!

中学校の修学旅行の地で買った
花柄のウサギのストラップを
付けた制カバンを肩にかけて
茶色のローファーを履いて
思いっきり家を出た。

「遅いよぉ〜!夢愛!電車遅れる!」
「お待たせ!おはよ!美帝」

迎えに来たのは向かいに住む幼馴染の
白川 美帝(ミカド)
私の大親友で、恋多き女。
恋を知らない私とは大違いだ。
ギャルってまでもないけど
髪はすっかり

「ネズミ色?」
「やめてよ、夢愛!
 アッシュグレーってゆうの!!!
 まだ軽くしか染めてないんだから!」

メイクもバッチリ目の周りはバサバサしている。
ツケマ、チーク、グロスだって
私の何万倍も濃い。

「学校に、、、行くんだよね??」
「そうよ?校区外の男探し〜」

まあ、そうなるか。

駅に着いたら、とりあえず
初めて使う定期券を見た。
『柏宮高校1年』
という文字にワクワクする。
憧れだった。スマートカードじゃないの。

「学校3割負担ってとこがまたいいよね〜」

と美帝が嬉しそうに呟いた。
距離によってかかる定期代は違うけど
ある程度一定になるように
学校側が負担してくれる有難いシステム。

「学校から家までの間は遊び放題だよ?
 今日は早速プリ行こうね?夢愛!」
「まあ、そだね!1年だもんね!」

と言葉を交わしているとホームに着いた。
人が多くてまさに
『通勤ラッシュ』って感じ!
光景だけで楽しめた。
田舎の人みたいだけど
まあ私も美帝も同じくらいワクワクしてて
昨日も3時まで起きて話してた。

「おはよ、美帝!夢愛ちゃん!」
「おはよう、大輝くん」
「大輝〜おはよぉ!」

声をかけてきたのは美帝の今の彼氏
平井 大輝(タイキ)くん
大人な落ち着いた他校の男の子。
美帝とは学習塾で出会ったんだとか。
でも美帝と付き合ったのか謎でたまらない。

「またまた離れ離れだけど
 帰りは塾から送るから、待ってろよ?」
「ほんと??ありがとう!」

カップルらしい会話。
朝から幼馴染が羨ましくてたまらない。

自分で言うのもなんだけど
私自身、そんなに頭が悪いわけではない。
だから、塾なんて縁のない場所だった。
この高校も推薦でストレートに決まった。

「あ、きたきた!大輝!あれだよね?」

美帝が電車を確認して見つめている。

「夢愛!たった20分くらいだったとしても
 こういうとこに出会いもあるはずだから
 シャキッとね!!」
「はい!了解です!精進します!」

バカみたいな会話をして
電車に乗り込む。

座れない。まあいっか。
スマホ触ってればすぐだよね。

目の前では幼馴染とその彼がイチャつく。
すぐ着く。すぐ着く。
SNSを開いて、どうでもいい情報を
指でスライドさせながら、眺める。

ぱっと顔を上げると2つ先の駅に着いていた。
ドアが開いて、春らしい匂いがした。

「桜の、、、いい匂い」

思わず口に出してしまった。

「え?何言ってるの、夢愛?
 匂いなんて何もしないけど?」
「大丈夫?夢愛ちゃん。」
「ほら、桜の匂いがする!」

2人に不思議そうな顔をされながら
頷かれ、納得がいかず、他へ顔を向ける。

「あ、、、」

私の目線の先に
春らしい、桜の匂いのしそうな男の子がいた。

『私は恋の匂いを知ってしまったのかもしれない』

都合のいいように自分で捉えながら
無意識に彼を見つめてしまっていた。
高身長で顔が小さくて整った顔立ちで
足が長くて、なんと言っても清潔感があって

「かっこいい、、、、、あっ」

2人の方を向いていなかったからか
2人には気付かれなかったけれど
声を漏らしていた。

彼に近づきたい。
名前を知りたい。
どこの生徒なんだろう。
あの腕時計のブランドは。

『気になる』
という感情はこういうものなんだ。