10.恋しすぎて

醍が出ていってから1週間経った日の朝、出勤すると植村さんと一緒に館長に呼ばれた。

「植村さんと和桜ちゃん二人にお願いしたいことがあるんだ」

私は何のことだか見当もつかず、植村さんと顔を見合わせた。

「今から半年後の来年の四月に、君たちも知ってると思うがこの美術館十周年を迎えるだろう?それに合わせて、先月の『無名の芸術家たち』展第二弾が開催されることになった。あの主催者まほろばの編集部チーフ山田さんが是非コラボで記念企画を考えましょうってね」

「十周年記念企画をまほろばさんとコラボでですか?」

目を丸くした植村さんが館長に問いかける。

「そうなんだ。まほろばさんがえらくこの美術館を気に入ってくれてね。こないだの展覧会もかなり好評だったから是非和桜ちゃんと植村さんにも企画に入ってほしいそうだ。二人は年齢も異なるし、それぞれ持ち味も違う。僕も、きっと二人で考えたら十周年にふさわしい企画が生み出されるような気がするんだ」

「そんな大役任せてもらって構わないんですか?ねぇ、和桜ちゃん?」

植村さんは私の肩に手を置き、興奮気味に私に振った。

「ええ。植村さんならまだしも私なんかがそんな大役頂いても大丈夫なんでしょうか?」

「もちろん、二人だからお願いしているんだ。和桜ちゃんのセンスは植村さんのお墨付きだし、こないだの無名の芸術家たち展では、チーフの山田さんもかなり和桜ちゃんを褒めてたよ」

「本当ですか?」

嬉しくて体が上気する。

ふと、あの『TUYUKUSA』のゾウの絵が脳裏に蘇った。

またTUYUKUSAさんも出展してくれるだろうか。