7.恋じゃない

その日は職場の飲み会で少し遅く家に帰った。

リビングの電気がついていたから、醍は帰っているんだろうと思い「ただいま」と玄関で声をかけてみる。

ん?

リビングから何の反応もなし。

廊下を進みリビングに入ると、彼はソファーの下にごろんと寝そべっていた。

そのすぐ横にあるちゃぶ台の上にはビールの空き缶が3本転がっていた。

あーあ、酔って寝ちゃったか。こんな場所で寝たら風邪ひいちゃうよ。

とりあえず、転がっている空き缶を捨て、汚れたちゃぶ台の上を布巾で拭いた。

そして、厚手の毛布を引っ張り出してきて醍の上にそっとかける。

「・・・・・・な、お」

横になった彼の口が僅かに動き、私の名前を呼んだような気がしたけれど、寝ぼけてるんだろうとそのまま自分の部屋に戻りホームウエアに着替えた。

ミネラルウォーターをコップに入れ、ソファーに腰を下ろす。

足もとには醍が転がっている状態でコップの水を飲んだ。

一緒に暮らし始めて気がつけばもう一ヶ月。

秋は過ぎ、冬が間近に迫る季節になっていた。

最初は緊張していたけれど、次第に彼がこの場所にいることが普通の感覚になっている。

こんな風に足もとで寝ていたとしても、気にならないくらいに。

眠っている醍の横顔を見ながら、「まだまだね」と小さく呟く。

彼の寝顔は何度見ても、その無防備な美しさに気持ちがくすぐられる。