ある日、世界は、僕達以外の人間を消した。
佐々木風兎、高校生。騒がしく五月蝿い教室を出て、階段を降り、靴箱から靴を取り、履き、そして学校を出た。いつも通り早足で帰ろうとした。が、今日は珍しく空に目をやった。この世界は、冬になろうとしていた。だからだろうか。空に違和感を感じた。僕は、気味が悪いと思い、空から目を反らした瞬間。瞬間だ。辺りは暗闇へと変化した。風もピタリと止み、人間の声もピタリと聞こえなくなった。聞こえるのは、人間以外の動物がパニクってる鳴き声。星も見えない。こんなに暗いんだ。星が見えてもおかしくない。というか、見えなきゃおかしい。異常が無ければ満点の星空が美しく輝いているはずなのだ。
「いや、でも太陽が消滅したのなら話は別…なのか…?」
思わず、そんな事を口ずさむ。
「でも、それなら、気温は落ちていくはずだ。なのに、あまり変化が無い…。」
かれこれ闇に包まれてから20分は経っている。太陽が消滅したのなら、何か気温に変化が出ても良いはずだ。最も奇妙だったのは、人間の声が聞こえないこと。スマホも使えないし周りに明かりが無いと言うことは電気製品は使えなくなっているはずだ。なのに、“わー!”も“キャー!”も聞こえない。話し声すら無い。僕は怖くなった。


「…。」
意識が飛んでしまったようだ。僕は校門の前で倒れていた。起きてみると辺りは明るくなっていた。だが、人間の話し声だけ、
「聞こえ…ねぇ…。」
動物の鳴き声は、聞こえる。スマホも使えるようになった。後は…。ふと、誰かと話したくなった。話題があるわけじゃないが、誰かと話したくなった。僕は、回れ右をして学校内へと走り出した。入った瞬間、違和感がありすぎて吐きそうになった。今は下校時間だったはず。僕が意識を失っていたとしても、そんなに長い間じゃない。長い間だったら、どこか建物の中に居たりするものだ。そんな事を考えながら僕は走った。誰も居ない廊下を。
僕は…いや、俺は、教室にたどり着いた。人々が居た形跡は在るのに、肝心の人々が居ない。体中が震えるほどの孤独感に襲われた。そして、震える手をポッケに突っ込み、ポッケに入っていたスマホで自分の母親にかけた。願いを込めて。
「頼む…!!この…孤独から…解放してくれ!…。」
しかし、母親は電話に出なかった。父親にもかけた。が、出なかった。電話帳にある人物全員にかけていった、
「出ねぇ…。」
そして、残り一名。
-山内雛-
諦めかけながらもかける。
プルルル…プルルル…プルッ





「「…。もしもし?」」






幻聴か?



あまりの驚きに自分の耳を疑う。無言で考えていると、また聞こえてきた。



「「もしもーーし。」」




俺は、ハッとして
「んも、もしもし!」
「「…?。なんか用?」」
「いや、用…って訳じゃ…無いんだけど……。」
「「んじゃ切るね。」」
「あぁあ!ま、待って!」
「「………。」 」
「あのさ、周りに人間…居る?」
「「…………………。は?」」
「いや…今から、お前ん家行って良い?ってか行くからな!」
「「は?!ちょっ嫌なんですけど!?」」ブチッ

俺は走った。