挨拶くらいは返ってくるようになって、しばらくした頃。
クラスの友達の誕生日が近くなって、仲が良い残りの4人でお金を出し合い、プレゼントをサプライズで渡す計画を立てた。何を選ぶかは一人一人考えて、アイデアを持ち寄ることに。

学校からの帰りの車の中でスマホであれこれを検索しながら、ふと。

『大島さんの誕生日っていつ?』

『・・・・・・・・・11月12日です』

聴こえなかった?、ってツッコミたくなるぐらいの間があってから、ぼそっと答えた凪。
先週じゃない! 思わず驚いた後部シートのわたしに、だから何、みたいな冷めた視線をルームミラー越しにくれたっけ。

誕生日は祝ってあげるもの。何かしてあげなきゃって当たり前に考えた。その時点で、相手が凪じゃなくてもそうしたか、って疑問が湧いてもおかしくなかったと思うのに。

誕生日=ケーキっていうオーソドックスな発想で、次の日の学校帰り、凪にはただお店の場所を伝えて、その界隈で口コミが多かったスィーツ店に寄り道をして。
カラフルで美味しそうに見えたからだと思うけど、ホールのフルーツタルトに“HAPPY BIRTHDAY”のプレートをお願いし、箱にリボンもかけてもらった。

車に戻ってすぐには渡さずに、家に着いて降りる時。外からドアを開けてくれた凪に『遅くなったけど、誕生日おめでとう』ってちょっと照れもあったのを隠しながら手渡した。ううん、押し付けた、が正解だったかな。
あの時の凪の顔は忘れられない。まるでお化けでも見たみたいな奇異の表情で。こっちがビックリしたくらい。