高い空が、澄んだ青さを見せはじめる。
頬を抜ける風も冷たくなってきた。


そんな11月の半ば。
お昼過ぎ。


私は先日おろしたばかりのストールへ顔を埋めながら、あるお店を目指していた。



(先週より寒いなぁ……。一年中春ならいいのに)



赤や黄色に染まりはじめた街路樹。
それが何百メートルも続く大通りを、そんなことを考えながら歩いた。


夏の蒸し暑さも、冬の寒さも苦手。


今もしインタビュアーが現れて、「あなたの大切にしていることは何ですか」と聞かれたとしたら、間違いなく「お店へ一刻も早く着くこと」と答えると思う。


そんなどうでもいい事が次々浮かんでは、その度に風の冷たさで我に返った。