もし、リョウさんが急にいなくなったら…?


フラッシュバックするあの出来事。
翔太郎の事故の知らせ。

突然のことだった。



人の別れはいつも突然だ。
いつ、何が起きるかわからない。

それは運命だから、逃れられないこと。

でも…たとえ仮定だとしても、簡単にそんなこと言わないで欲しかった。


「そんなの…考えられないですよ。嫌ですよ、いなくならないで…」


言葉を絞り出す。
リョウさんは、私の気持ちを確かめているの?

だとしたら、リョウさんはどんな答えをくれる?



…そんなの、ついさっきのリョウさんの行動であらかた理解しているはずなのに。

それでも言葉を欲してしまう。




「俺がいなくなったら、困る?」


「困ります」


「…もう、前の恋とはサヨナラできた?」


…え?
前の恋?

リョウさんは、なにかを知っている?


翔太郎のことを話したことは一度もない。
無意識に自分から何かを口走ったのか?

いや、そんなはずは…



「でき…ました」


頭でグルグル考えながら出た返事に、リョウさんはやっぱり悲しそうな顔をして笑った。


「…そうか」