私と瑞樹の関係に衝撃を受けた社長は、私に気を遣ってか、その日はそれ以上一緒にいることはなく、私をアパートまで送り届けた。

もうこれで、完璧に、社長は私には近づかなくなるだろう。

実際、あの日以来、社長が私の前に現れることも、連絡してくることもなく、清々したつもりでいたけど、どこか寂しさも感じていた。

あれから幾日過ぎたのか、私は、社長の事も、瑞樹の事も、忘れようと、仕事に没頭していた。

「有坂」
「はい、何でしょうか、松木先輩?」

手招きされて、要の所に行くと、これから約一ヶ月間、企画部のサポートに入ることになったことを告げられる。

「そう言うことだから、これから企画部のオフィスに行くぞ」

「はい、企画のお手伝いなんて、楽しみです」

何も知らない私の言葉に、要は苦笑いする。

私はなぜかと問いかけると。

「毎年一回は企画部の手伝いさせられるんだけど、あまりの忙しさに、最終日にはみんな、顔がげっそりしてるよ」

そう言って、要は一歩先を歩いていく。

毎年、新人と、その教育係がその役目に当てられるのだが、一ヶ月の仕事が終わる頃には、二人ともが痩せる程の激務だと、総務課のみんなが口を揃えて言う。