車内で桜庭さんはここ二週間ばかり忙しくて大変だった…と話した。


「デザインの納期が重なって、毎日深夜まで設計してたんだ」


ようやく今日は時間が取れそうだと思っていたところへ、「映画の券は要りませんか?」と問われたらしい。


「この間は君にお土産は要らないと拒否されたし、その代わりにと言っては何だけど、一緒に映画を観るのもいいかな、と思ってね」


ホラーの券もあったんだけど、そっちの方が良かった?と訊ねられ、「滅相もない!」と断固拒否。


(そんなものを観たら、怖くて絶対にくっ付くことになるじゃない!)


それならまだファミリー向け映画の方がいいと納得し、「これで十分です」とチケットをヒラヒラさせて言った。



実は、この映画は予告を観た時から気になってたんだ。

丁度兄が急逝して間もない頃にテレビで予告が流れ、綺麗な映像と歌声に包まれた死者の国を描いていると言っていた。


兄が逝った先もそんな場所だといいな、と感じた。
機会があれば一度でいいからスクリーンで観たいと思ってたんだ。